仕事で成果を上げるためには個の力も大切ですがチームで協力することも必要不可欠です。最近、社内の人間関係の改善やコミュニケーションスキル向上のために、エゴグラムを社内研修に取り入れる企業が増えてきているようです。
エゴグラムのもとになった交流分析について本ページでは紹介します。
交流分析の始まり
交流分析(Transactional Analysis)とは、「人と人のやりとりの分析」という意味を持つ心理療法で、エリック・バーン (Berne,E.1910-1970)により開発されました。小集団による心理療法としてだけでなく、パーソナリティ論、人間関係論としても理論が確立されており、人間関係や個人の発達理解、組織開発などにも広く利用されています。
心理療法としての交流分析の特徴は、人間の自律性の達成にあるとされています。内容は以下のように定義されています。
①理論は自己理解、自己洞察を得られやすいように構成されている。
②「今、ここ」で過去の体験を再現することにより、その体験を検討し、自分の意思決定により新たな自己の行動を選択できる方法論を持っている。
③「親密さ」を重視し、真実のかかわり、心からのやさしさ、温かさを強調する、といった特徴を持つ実存的アプローチ。
参考文献:平木典子(2004)『カウンセリングの話』朝日新聞
主要概念や技法について
交流分析の理論は主に次の5つの基本概念で構成されます。
1.ストローク
人の存在を認める行為、「人は誰しもストロークを求めて生きている」とバーンは定義しました。このストロークには、実際に身体的に接触する「タッチ・ストローク」と、言葉がけなどの精神的な「認知的(心理的)ストローク」があり、乳幼児期にはタッチ・ストロークが不足すると発育不全を起こすとしています。
2.構造分析
構造分析では自我の状態を3つに分類し、構造分析を通して、個人の自我状態が優勢であるかを明らかにします。3つの部類の内訳は、親(patient)、大人(adult)、子ども(child)で、親と子どもには2種類の自我状態があります。
大人の自我状態には、主として批判や避難を行う批判的な親の状態(CP:Critical Patient)と、主としてほめたり労ったりする養護的な親の状態(NP:Nurturing Patient)があります。このような親の自我状態は過去に自分の親から取り入れたものであるとされます。
子どもの自我状態には、両親のしつけの影響を受けていない、感情的、衝動的、自己中心的な自由な子どもの状態(FC:Free Child)と、両親のしつけの影響を受けた部分で、両親の期待に沿った行動をする順応した子ども(AC:Adapted Child)の状態があります。このような子どもの自我状態は過去に自分が子どもの時に体験したものであるとされます。
3.交流パターン分析(やりとり)
人と人との一対一のやりとりの単位で考えます。人間は3つの自我状態を持つので、その人がP/A/Cのどの自我状態で誰に話しかけ、相手がどの状態で反応するかを詳しく観察することで、人間関係とコミュニケーションを改善するための手がかりを得ることができます。
4.ゲーム分析(人生ゲーム)
隠された動機によるやりとりのことで、表面的な心地良さの裏に、必ず正直な駆け引きがある。それがノイローゼや慢性的悪循環の人間関係をつくる基になります。ゲーム分析は構造分析の治療的活用法の中核です。
5.脚本分析(人生脚本)
構造分析では人生をドラマと見たて、各自が独自のシナリオを演じます。その中で人が演じる役割や筋書きを「脚本」と呼びます。脚本を分析し、自己実現するため脚本を意識的に建設的なものに書き換えようという、交流分析の最終段階です。
エゴグラム
エゴグラムはバーンの弟子であるデュセイによって考案されました。自我状態の5つの機能の関係とエネルギーの大きさを棒グラフ、もしくは折れ線グラフで示したものです。自己理解を深めるために使われます。
エゴグラム、学校の授業や会社の研修でやることはありますが、交流分析の考え方ををグラフ化したもののことです。ちなみにこちらの図は日本人の平均エゴグラムです。NPが高いという部分が日本人らしいですね。
まとめ
今回は交流分析についてまとめてみました。
相手の自我状態がどこにあるかを確かめて、コミュニケーションをとる。ある意味とても合理的なのかもしれません。MBTI診断なども流行っていますが、合理的に人間関係を構築し、相互理解をする方法として覚えておきたい考え方の一つだなと個人的に感じました。
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